1. 高血圧とは?

  • 高血圧は、動脈に加わる血液の圧力が通常よりも高い状態を指します。通常、収縮期(心臓が血液を送り出すとき)と拡張期(心臓がリラックスして血液が戻るとき)の二つの数値で示され、収縮器血圧が1 4 0 m m H g以上の場合、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合、あるいはこれらの両方を満たす場合に診 断されます。そのままにしておくと動脈硬化が進行して脳卒中や心臓病、腎 臓病など重大な病気になる危険性が高まります。

2. 高血圧の分類

  • 高血圧は、一次性高血圧(特定の原因が特定されない)と二次性高血圧(他の疾患や薬剤の副作用などによる)に分類されます。二次性高血圧の原因は以下の通りです。
    • 腎機能の低下で塩分と水が排出されにくく なる場合
    • 副腎など内分泌疾患によって血圧を上げるホルモンが体のなかに増える場合
    • 血管障害
    • 薬剤の影響

3. 高血圧の症状

  • 多くのケースでは自覚症状を認めることはありません。しかし高血圧が続くことで脳や心臓の血管が動脈硬化を起 こし、腎臓のはたらきが悪くな ることがあります。以下の症状を認めるときは、高血圧によって臓器が傷みはじめていることが疑われます。また、以下のような症状がなくても突然の脳卒中や心筋梗塞など血管の病気の発症に関与する可能性がありますので、早めにご相談ください。
    • 早朝の頭痛
    • 夜の頻尿
    • 呼吸しづらさ
    • めまい
    • 動悸

4. 高血圧の診断目標値

  • 高血圧の診断基準は、高血圧治療ガイドライン2019では収縮期血圧 140 mmHg 以上または拡張期血圧 90 mmHg以上と定められています .
  • 目標となる血圧は年齢や保有する病気によっても異なります、詳細は以下の通りです。
診察室血圧家庭血圧
75 歳未満<130/80<125/75
脳血管障害(頚動脈狭窄、脳動脈閉塞なし)<130/80<125/75
冠動脈疾患<130/80<125/75
慢性腎臓病(蛋白尿陽性)<130/80<125/75
糖尿病<130/80<125/75
抗血栓薬服用中<130/80<125/75
75 歳以上<140/90<135/85
脳血管障害患者(頚動脈狭窄、脳動脈閉塞あり、また未評価)<140/90<135/85
慢性腎臓病(蛋白尿陰性)<140/90<135/85

5. 予防

  • 高血圧を予防するためには、以下の生活習慣の改善が重要です。
    • 減塩:食塩摂取量 6 g/日未満
    • 肥満の予防や改善:体格指数(BMI) 25.0kg/m2未満
    • 節酒:アルコール量で男性20~30 mL/日以下、女性10~20 mL/日以下
    • 運動:毎日30分以上または週180分以上の運動
    • 食事:野菜や果物の積極的な摂取、飽和脂肪酸・ コレステロールを避ける
    • 禁煙:喫煙のほか間接喫煙(受動喫煙)も避ける
    • その他:防寒やストレスのコントロール

6. 治療

  • 高血圧の治療には、薬物療法、生活習慣の改善、必要に応じた手術などが含まれます。
    • カルシウム拮抗薬:血管を広げて血圧を下げます 
    • ARB 、ACE阻害薬:血管を収縮させる体内の物質をブロックして血圧を下げます
    • 利尿薬:血管から食塩と水分(血流量)を抜いて血圧を下げます
    • β( ベ ー タ )遮断薬:心臓の過剰な働きを抑えて血圧を下げます

7. 当クリニックでの対応

  • 当クリニックでは、高血圧によって体(臓器)がどれくらい影響を受けているか、また、高血圧の 治療を行ううえで重要な合併症がないか、そして高血圧の原因となる腎臓やホ ルモンの異常がないかについて、次のような検査を行うことがあります。
    • 心電図:高血圧合併症である心肥大 (心臓の筋肉が厚くなること)、心臓の虚血(心臓の筋肉 への血流不足)、不整脈(脈の 乱れ)などの有無を調べます。
    • 心エコー:高血圧合併症である心肥大、 心機能、弁膜症を調べます。
    • 胸部レントゲン:高血圧合併症である心肥大、 心不全の有無を調べます。
    • 血液検査:高血圧とともに動脈硬化を引 き起こす脂質異常症や糖尿病 の有無を検査します。また、 高血圧の原因となる腎機能低 下やホルモン異常を探ります
    • 尿検査:高血圧合併症となる腎臓へ の負担や腎臓病の有無を調 べます。また、尿中食塩排泄量を測定することで、食塩摂取量を推測できます。 高血圧の原因となるホルモ ン異常を尿検査で調べるこ ともあります。
    • 心臓足首血管指数(CAVI)、足関節上腕血圧比(ABI):高血圧に合併する動脈硬化の具合を調べます。
    • 頚動脈エコー:脳にいく頚部の動脈を評価することで高血圧に合併する脳卒中の起こりやすさを評価します。